なぜ歯周外科が必要なの?
歯周病改善のためには、歯垢(プラーク)や歯石と呼ばれる歯周病菌の塊を除去することが欠かせません。歯周病治療ではまず、プラークコントロール・スケーリング・ルートプレーニングなど歯周基本治療によって歯垢や歯石を除去します。
歯根の表面の歯垢や歯石は、器具を歯周ポケットの中に差し込んで手探りでかき取ります。しかし、歯周ポケットの深い部分には器具が届かなかったり、届いたとしても正確に操作できず、除去は難しくなります。
そのため、歯茎や骨など歯周組織の破壊が進み深い歯周ポケットがあるケースの場合、歯周基本治療では除去しきれなかった歯垢や歯石を除去するために、フラップ手術などの歯周外科治療を行う必要があります。
フラップ手術とは?
歯周基本治療では治りきらず、深い歯周ポケットや炎症が残った場合に行う歯周外科手術のことをフラップ手術(歯肉剥離掻把術)と言います。
切除的外科療法であるフラップ手術では、部分的に歯茎を切開して開き、深い歯周ポケットを形成している病巣がよく見えるようにしてから感染している組織や歯石を除去します。
部分的に歯茎を切開することで、実際に目で見て感染を起こしている部分を確認できるため、歯周基本治療では除去しきれなかった歯石をしっかりと除去し、炎症によって破壊されてしまった歯槽骨の形を整えることができ、歯周組織を健康な状態に導きます。
部分的に切開した歯茎(フラップ)は処置を行った後で元に戻し、縫合します。
フラップ手術の流れ
一般的な抜歯手術よりも手術範囲は多少広くなるものの、フラップ手術に入院などは必要ありません。治療する歯の本数や状態によっても処置時間は異なりますが、数本で1〜2時間ほどとなります。
基本的には、フラップ手術(歯肉剥離掻把術)は以下のような手順で行います。
- 手術をする部分に麻酔をします。
(当院では、痛みが出ないよう麻酔自体にも配慮をしております) - 歯茎を切り開き、部分的に剥離します。
- 感染を起こしている歯周ポケットの周辺組織を除去します。
- 歯石を取り除き、歯根表面を滑沢にします。
- 炎症によって破壊されてしまった歯槽骨の形を整えます。
- 剥離した歯茎を元に戻して、切開した部分を縫合します。
- 特殊なパックで傷口を覆って保護することもあります。
エムドゲイン法(歯周組織再生療法)
エムドゲイン法(歯周組織再生治療)とは、特殊なタンパク質によって歯周病で失われた歯周組織を再生させる治療法です。
スウェーデンで1997年に臨床応用されて以来、副作用のない安全性の高い治療法として世界44カ国(2009年3月時点)で用いられている方法です。
エムドゲインの流れ
歯槽骨や歯根膜などの歯周組織を失ってしまった部分にエムドゲインゲルを塗ることで再生を促すのがエムドゲイン法です。
- 手術をする部分に麻酔(当院では、痛みが出ないよう麻酔自体にも配慮をしております)をし、治療部分の歯茎を切開します。
- 切開した部分を剥離します。
- 歯根の表面に付いた歯石を取り除き、清掃します。
- エムドゲインゲルを清掃した歯根の表面に塗布します。
- 剥離した歯茎を元に戻りし、縫合します。
歯肉切除術
歯周病や歯肉増殖症などで増殖した歯茎を切除し、深い歯周ポケットを治療するために行う歯周外科手術を歯肉切除術と言います。
歯肉切除術でプラークコントロールしやすい状態にすることによって、炎症を起こした歯周組織を改善します。 歯茎の位置が下がるため歯が長くなったように見える、歯根が露出することで知覚過敏が起こるなどの理由から、近年は歯肉切除術はあまり適用されません。
現在ではフラップ手術や歯周組織再生療法(エムドゲイン法、GTR法)が歯周病の手術として選ばれることが多くなっていますが、症例によっては歯肉切除術で治療するケースもあります。